夕張石炭博物館 存続決定へ

4日ほど遅れた話題ですが……。
予算面の都合で先月末から「閉鎖か?」「それとも存続か?」を問われていた夕張市にある石炭博物館ですが、この度『存続』が決定しました。
一時期は、閉鎖されて博物館の貴重な展示品は処分・散逸するのではないかという噂もあっただけに、とりあえずは一安心といったところでしょうか。
ただ,1980年に建物が完成してから30年近い年月が経ち、外見も内部もかなり老朽化が目立っていることもあり、手をつけるべき部分は未だ山積みです。
それに石炭博物館の目玉である模擬坑道は、維持するのに排水ポンプを24時間365日常に稼動させなければ水没してしまいますので、かかる金や手間も大変です。自分は2年前の秋に一度行ったきりなのですが、模擬坑道に入坑した時にカビ臭さとともに足元の側溝から「チョロチョロ」と途切れなく聞こえた染み出る地下水の音は、今でも記憶にあります。
本物の炭層が存在する観光用坑道は国内ではここだけなので、これからも何とかして残していってほしいものです。

9月に清水沢炭住を見学した際、現地で案内をされていた夕張地域史研究資料調査室の青木隆夫室長(元石炭博物館館長)に、石炭博物館に収蔵されている夕張新鉱関連の資料を見せてもらえないか交渉したところ、「ご希望の資料は恐らく館内倉庫に保管されていますが、以前は提供できたのだけれど現在は市ではなく民間企業(加森観光)の手に渡っており、所属学芸員も既に解雇されているので、自分では指一本触れられず、どうしようもならない」という発言をされていました。
「貧すれば鈍す」とも言いますが、この時の会話で夕張市財政破綻の影響が、将来に伝えねばならない文化や歴史的財産にまで大きなダメージを与えている根の深さに慄然としました。
 
 
イメージ 2
石炭の歴史村入り口
明治~大正期の炭鉱によく見られた煉瓦巻の坑口風なデザイン。横にいるマスコットは「ゆうちゃん」
ちなみに訪れた2008年秋当時は、石炭博物館へ入館するのに「ぐるっとパス」とよばれる市内観光地(石炭の歴史村、北炭鹿ノ谷倶楽部、黄色いハンカチ広場、夕張美術館)への総合入場券を購入せねばならず、値段は大人一人3000円(!)もしました。
今はぐるっとパスは廃止され、それぞれ単独での入場料方式となっており、石炭博物館は大人1200円です。
 
 
イメージ 1
模擬坑道内部
デジカメのフラッシュを焚いて撮影したのでしっかり写っていますが実際は真っ暗闇で、坑内では入坑時に装着するキャップライトで足元を照らしつつ歩きます。
坑道を支えるアーチ枠はどれも真っ赤に錆び、坑木には青色や白色のカビが生えていました(崩れる心配は無いでしょうけれど)。

 
イメージ 3
石炭博物館 遠景
立坑櫓は色・形とも夕張新鉱のを模している。
遠目からだと見えにくいが、実際はペンキが剥がれて結構錆が浮いていた。

 
イメージ 4
石炭の歴史村オープン式典で関係者や入場客へあいさつをする中田鉄治夕張市長(当時)。
彼による「炭鉱から観光へ」をキャッチフレーズとした発想は世間から大きな賞賛を浴びたが、その後、市の財政を無視した過剰な観光事業へ暴走することとなる。
 (アサヒグラフ 1982年6月17日号)
 
 
////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////////
 

夕張市石炭博物館、存続へ・・・公費で修繕・維持
 老朽化した夕張市石炭博物館の改修などを検討する「石炭博物館のあり方検討委員会」(委員長=河西邦人・札幌学院大教授)が16日、公費負担による施設存続に向けて、新たな設置条例の制定を検討することなどを盛り込んだ報告書案をまとめた。これを基に報告書がまとめられ、24日の最終会合で正式決定する。同博物館は閉鎖の可能性もあったが、最悪の事態は回避されることになった。
 
 同博物館は「石炭の歴史村」の中核施設として1980年7月に開業。旧北炭夕張炭鉱の坑道を使い、明治時代以降に石炭で栄えた空知地方の様子を紹介する施設として知られる。
 報告書案では、石炭博物館が単なる観光集客施設ではなく、地域文化を伝える本来の博物館としての性格を有していると指摘。「公費の投入による施設の存続を図ることを前提に、市民財産として保全していくことが重要」と結論づけた。
 
 同館は現在、博物館法に基づく施設ではなく、観光施設として位置づけられているため、財政再生計画を実行していくと、指定管理か休廃止かのいずれかを義務づけられるという。近い将来、数億円規模の修繕費が見込まれるため、現在、指定管理者となっている加森観光の子会社「夕張リゾート」(西田吏利社長)が、指定管理を返上する可能性も指摘されていた。
 
 同市は報告を受けた後、条例制定や維持修繕費負担のための財政再生計画変更などを検討していく見通し。
 
  (2010年11月17日  読売新聞)